2026年6月7日日曜日

夕日の花畑で振り返る人

夕日の花畑で振り返る人

夕日が海に沈んでいく時間。

空も、海も、花畑も、
少しずつ淡いピンク色に染まっていく。

その花の中に、ひとりの女性が立っていた。

白く淡い浴衣の袖が、
夕方の風にふわりと揺れている。

彼女は海のほうへ歩いていたのか、
それとも、花畑の中で立ち止まっていたのか。

ふと、こちらを振り返る。

その表情は、笑っているわけではない。
けれど、寂しいだけでもない。

まるで、言葉にする前の気持ちを、
そのまま夕日の中に置いてきたような顔だった。

海の上には、金色の光の道が伸びている。

その光は、どこか遠くへ続いているようにも見えるし、
もう戻れない時間へ続いているようにも見える。

ピンクの花は、足元で静かに揺れていた。

一輪一輪は小さいのに、
丘一面に咲くと、まるで夢の中の景色みたいになる。

きれいな景色を見ると、
人はなぜか少し黙ってしまう。

うれしいのか、
さみしいのか、
懐かしいのか、
自分でもよく分からない。

ただ、その瞬間だけは、
心の中のざわざわしたものが、
夕日の光に溶けていくような気がする。

彼女が振り返ったのは、
誰かを待っていたからかもしれない。

それとも、
「この景色を忘れないで」と、
静かに伝えたかったのかもしれない。

夕日は少しずつ低くなっていく。

海の色も、花の色も、空の色も、
同じようでいて、二度と同じには戻らない。

だからこそ、きれいなのだと思う。

永遠に続かないものほど、
人の心に残る。

花畑の中で振り返るその姿は、
一枚の絵というより、
どこかで見たことのある記憶のようだった。

遠い海。
淡い夕日。
ピンクの花。
白い浴衣。

そして、静かにこちらを見るまなざし。

その景色は、
今日という一日が終わる前に、
心へそっと置かれた小さな贈り物のようだった。


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