2026年4月3日金曜日
光がほどける瞬間に、君はいた
夕暮れとも、夜明けともつかない時間。
世界がいちばん曖昧になるあの境目で、
ふと立ち止まった。
光が、少し変だった。
いつもみたいにまっすぐじゃなくて、
細かく砕けて、やわらかくにじんでいた。
まるで、現実が少しだけほどけているみたいに。
目の前に、和服の彼女がいた。
いるはずなのに、どこか輪郭があいまいで、
風でもないのに、髪だけがゆっくり揺れている。
時間が、ズレている。
そう思った瞬間、
彼女はタンポポの綿毛にそっと息を吹いた。
ふわり、と。
綿毛は空へ舞い上がるはずだった。
でも、途中で形を失っていった。
白いはずのそれは、
いつの間にか光になって、
虹色に砕けて、
粒になって、
空気に溶けていった。
視界のすべてが、にじみ始める。
光はひとつに集まらず、
何重にも重なって、遅れて、追いかけてくる。
まぶしいはずなのに、
どこかやさしくて、
怖くはなかった。
むしろ、安心するくらいに。
彼女の顔を見ようとしたけれど、
そのたびに少しずつ違って見えた。
同じはずなのに、同じじゃない。
人のようで、人じゃない。
でも、不思議と、
そこに“いる”ことだけは確かだった。
綿毛も、光も、空気も、
彼女も、自分も。
全部の境界が、ゆっくり消えていく。
世界がひとつのやわらかい光になって、
ただ、静かに流れていた。
あれが夢だったのか、
それとも現実が少しだけ壊れていたのか。
今でもわからない。
ただひとつ覚えているのは、
あの瞬間、
世界は確かに、きれいだったということ。
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