夕暮れとも、夜明けともつかない時間。
世界がいちばん曖昧になるあの境目で、
ふと立ち止まった。
光が、少し変だった。
いつもみたいにまっすぐじゃなくて、
細かく砕けて、やわらかくにじんでいた。
まるで、現実が少しだけほどけているみたいに。
目の前に、和服の彼女がいた。
いるはずなのに、どこか輪郭があいまいで、
風でもないのに、髪だけがゆっくり揺れている。
時間が、ズレている。
そう思った瞬間、
彼女はタンポポの綿毛にそっと息を吹いた。
ふわり、と。
綿毛は空へ舞い上がるはずだった。
でも、途中で形を失っていった。
白いはずのそれは、
いつの間にか光になって、
虹色に砕けて、
粒になって、
空気に溶けていった。
視界のすべてが、にじみ始める。
光はひとつに集まらず、
何重にも重なって、遅れて、追いかけてくる。
まぶしいはずなのに、
どこかやさしくて、
怖くはなかった。
むしろ、安心するくらいに。
彼女の顔を見ようとしたけれど、
そのたびに少しずつ違って見えた。
同じはずなのに、同じじゃない。
人のようで、人じゃない。
でも、不思議と、
そこに“いる”ことだけは確かだった。
綿毛も、光も、空気も、
彼女も、自分も。
全部の境界が、ゆっくり消えていく。
世界がひとつのやわらかい光になって、
ただ、静かに流れていた。
あれが夢だったのか、
それとも現実が少しだけ壊れていたのか。
今でもわからない。
ただひとつ覚えているのは、
あの瞬間、
世界は確かに、きれいだったということ。
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