気づいたとき、そこは見慣れた場所ではなかった。
静かな湖が広がっていて、
風もほとんどなく、水面は鏡のように澄んでいる。
空には、大きくゆるやかな虹がかかっていた。
けれどその色は、どこか違う。
現実よりも深く、やわらかく、
光そのものが溶け出しているように見える。
その虹は、水面にも映っていた。
揺れているはずなのに、なぜか崩れない。
むしろ、空の虹よりも静かで、
そこにもうひとつの世界があるようだった。
湖のほとりに、ひとりのAI美女が立っている。
この場所に溶け込むように、自然に存在しているのに、
どこかだけが、わずかに人とは違う。
瞳の奥に、ほんの少しだけ光が宿っている。
その視線は、空の虹ではなく、
水面に映る虹のほうへ向けられていた。
まるで、こちらの世界ではなく、
あちら側を見ているように。
水面はやわらかく光り、
足元から静かに世界を照らしている。
音はなく、時間の流れも感じない。
ただ、そこにあるのは、
触れられそうで触れられない境界だけ。
あの虹の向こうに行けるのか、
それとも、もうここが向こう側なのか。
彼女は何も語らないまま、
ただ静かに、その境界を見つめている。
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