夜の吉原は、どこか現実から少しだけ離れている。
提灯の灯りとネオンが混ざり合い、時間の境界が曖昧になる。
雨上がりの石畳は、空の月をそのまま映し込み、
足元にもうひとつの世界を作っていた。
その中を、ひとりの花魁が歩いてくる。
ゆっくりと、けれど確かな存在感で。
赤と金が揺れるたび、視線が奪われる。
まるで炎のようで、でもどこか冷たくて。
手にした扇子がわずかに動くたび、
周囲のざわめきさえ静まっていく気がした。
彼女は誰なのか。
人なのか、それとも別の何かなのか。
ただひとつ言えるのは、
この夜、この瞬間、この場所において——
すべての視線は彼女のものだった。
月はただ、静かにそれを見ている。
0 件のコメント:
コメントを投稿