あの夜のことを、うまく説明するのは少し難しい。
夢だったのか、それとも現実のどこかに本当に存在している場所なのか、今でもはっきりしないからだ。
気がつくと、僕はひとつの部屋に立っていた。
そこは普通の部屋ではなかった。
壁は深い赤を宿したルビーでできていて、静かに呼吸するように光を反射していた。
床はサファイアの青が広がり、水面のように揺れる光が足元を流れていく。
そして天井にはエメラルドの緑が広がり、空気そのものをやわらかく染めていた。
どこを見ても、光だった。
でもまぶしいのではなく、どこか優しくて、触れたくなるような光。
さらにその奥、透き通ったダイヤモンドが、月の光を細かく砕いていた。
虹色の粒子が空間に漂い、まるで時間がゆっくりほどけていくみたいだった。
そのとき、中央にひとりの女性がいることに気づいた。
淡く光をまとったドレス。
宝石の色と溶け合うような、不思議な存在感。
彼女は片手をそっと空にかざして、光に触れていた。
まるで、その光と会話をしているみたいに。
僕は声をかけようとしたけれど、やめた。
この静けさを壊してしまう気がしたからだ。
彼女は少しだけ微笑んで、ほんのわずかに視線を落とした。
その表情は、どこか懐かしくて、でも手の届かない距離にあるようにも感じた。
その瞬間、宝石たちの光がゆっくりと強くなり、
赤、青、緑、そして虹色が重なり合って、空間全体がひとつの流れになった。
気づけば、僕はその中に溶け込んでいた。
境界が曖昧になって、自分がどこにいるのかも分からなくなる。
——そして、目が覚めた。
いつもの部屋、いつもの天井。
でも、あの光だけが、まだどこかに残っている気がする。
あれはきっと、ただの夢じゃない。
今でもふとした瞬間に思う。
もしもう一度、あの宝石の部屋に戻れたなら。
今度は、ちゃんと声をかけてみようと思う。
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