かつて多くの信仰を集めたであろう、古びた神社の石段。
苔むした灯籠が静かに並び、朽ちかけた木々の間から、清冽な月光が差し込む。
その光の柱に包まれるように、一人の女性が佇んでいた。
彼女が身に纏うのは、汚れなき白の装束。
そしてその手には、白く、静寂を湛えた能面。
踊り終えたのか、それとも、これから舞い始めるのか。
彼女はゆっくりと面を外し、遠くを見つめる。
その横顔は、この世の者とは思えないほど美しく、そしてどこか物憂げだ。
風が、彼女の袖を静かに揺らす。
ここは、現実と常世(とこよ)の境界。
時の流れから取り残されたかのような、幽玄の世界が、そこにはあった。
0 件のコメント:
コメントを投稿