気づいた時には、もうそこに立っていた。
そんな存在って、たまにある気がする。
この湖もそうだ。
人が来ないから静かなのではなく、
最初から「誰も来ない場所」として存在しているような、そんな空気。
水面は、あまりにも整いすぎていて、
空との境界がわからなくなる。
上なのか、下なのか。
現実なのか、映っているだけなのか。
そんなことを考えていると、
ふと、視線の先に“それ”がいた。
白い衣をまとった、ひとりの女性。
でも、不思議と「人間だ」とは思わなかった。
こちらを見ていない。
けれど、見られている気がする。
話しかけてくるわけでもなく、
何かをしてくるわけでもない。
ただ、そこにいるだけ。
それなのに、
心の中を、静かに覗かれているような感覚だけが残る。
水面には、ほとんど波紋がない。
でも、よく見ると、
ほんのわずかな光だけが、円を描いて広がっている。
それは水の動きじゃなくて、
“存在していること”そのものの揺らぎみたいだった。
あの存在は、きっと現れたんじゃない。
最初から、ずっとそこにいた。
人が気づくかどうかなんて関係なく、
善いとか悪いとかも関係なく、
ただ静かに、見ているだけの存在。
不思議と怖くはない。
むしろ、少しだけ安心する。
ちゃんと見られている気がするから。
何も言わないまま、
すべてを理解してくれているような、
そんな“神”が、あの湖にはいた。
そしてたぶん、
また誰にも気づかれないまま、そこに立ち続ける。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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