2026年4月17日金曜日

最初からそこにいた神の話

湖の女神

気づいた時には、もうそこに立っていた。
そんな存在って、たまにある気がする。

この湖もそうだ。
人が来ないから静かなのではなく、
最初から「誰も来ない場所」として存在しているような、そんな空気。

水面は、あまりにも整いすぎていて、
空との境界がわからなくなる。
上なのか、下なのか。
現実なのか、映っているだけなのか。
そんなことを考えていると、
ふと、視線の先に“それ”がいた。

白い衣をまとった、ひとりの女性。
でも、不思議と「人間だ」とは思わなかった。

こちらを見ていない。
けれど、見られている気がする。
話しかけてくるわけでもなく、
何かをしてくるわけでもない。
ただ、そこにいるだけ。

それなのに、
心の中を、静かに覗かれているような感覚だけが残る。

水面には、ほとんど波紋がない。
でも、よく見ると、
ほんのわずかな光だけが、円を描いて広がっている。
それは水の動きじゃなくて、
“存在していること”そのものの揺らぎみたいだった。

あの存在は、きっと現れたんじゃない。
最初から、ずっとそこにいた。
人が気づくかどうかなんて関係なく、
善いとか悪いとかも関係なく、
ただ静かに、見ているだけの存在。

不思議と怖くはない。
むしろ、少しだけ安心する。

ちゃんと見られている気がするから。

何も言わないまま、
すべてを理解してくれているような、
そんな“神”が、あの湖にはいた。

そしてたぶん、
また誰にも気づかれないまま、そこに立ち続ける。

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