夜の未来都市は、思っていたよりも静かだった。
ネオンの光はどこまでも続いているのに、音だけが遠くに置いていかれている。
ビルの屋上。
その端に、ひとりの少女が座っていた。
足をぶらぶらとさせながら、ただ街を見下ろしている。
まるで、この世界と少しだけ距離を置いているみたいに。
彼女の髪は夜風に揺れて、淡く光っていた。
人工の光なのか、それとも彼女自身のものなのかはわからない。
ただ、その横顔はとても静かで、どこか寂しそうだった。
「ねえ、この光の中に、私の居場所ってあるのかな」
誰に向けた言葉でもない。
夜に溶けていく、小さな問い。
街は答えない。
ただ、何も知らないふりをして輝き続けている。
少女は少しだけ目を細めた。
遠くのビルの灯りを、一つひとつ確かめるように見つめながら。
「でも…悪くないかも」
小さくつぶやいたその声は、風にさらわれていった。
未来はきっと、まだ完成していない。
だからこそ、どこかに自分の場所が残されている気がした。
少女は立ち上がることもなく、ただそこに座り続ける。
夜と、光と、少しの孤独を抱えながら。
そしてまた、静かに未来を見ていた。
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