2026年3月11日水曜日

教室の片隅で、先生と少しだけ話した時間


放課後の教室は、昼間とはまるで別の場所のように静かだった。
子どもたちの声が消えると、黒板の前の空気までゆっくり流れている気がする。

忘れ物を取りに戻った私は、教室にまだ先生がいることに気づいた。
プリントをまとめながら、ふと顔を上げてこちらを見る。

「どうしたの?忘れ物?」

その言葉は、怒るわけでもなく、からかうわけでもなく、ただ自然だった。

「はい、ノートを…」
そう言いながら机を探していると、先生が少し笑う。

「たぶん、それ…そこじゃないかな?」

指さした先を見ると、本当にそこにノートがあった。
少し恥ずかしくて、「ありがとうございます」とだけ言う。

先生は手に持っていたマーカーを机に置いて、ふっと言った。

「ちゃんと取りに戻るの、えらいね。」

ただそれだけの言葉なのに、なぜか少しうれしくなる。

教室の時計がコツコツと音を立てる中で、ほんの短い会話が流れていった。

「気をつけて帰ってね。」

そう言って先生はまたプリントに目を戻した。

教室のドアを開けて廊下に出たとき、さっきまでの静かな空気と、先生のやさしい声が、なぜか少しだけ心に残っていた。

たぶん、特別なことは何も起きていない。
でも、こういう何気ない会話が、あとからふと思い出す時間になるのかもしれない。

そんな気がした放課後だった。

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