2026年3月12日木曜日

少し元気のない先生と、放課後の静かな会話


放課後の教室は、昼間のにぎやかさがすっかり消えていた。
窓の外から入る夕方の光が、机の上をゆっくりと染めている。

ふと見ると、教室の前に先生が立っていた。
いつもは笑顔の先生だけど、その日は少しだけ表情が違っていた。

「先生、どうしたんですか?」

そう声をかけると、先生は少し驚いたようにこちらを見た。
手にはノートの束を抱えたまま、小さく息をつく。

「うーん…ちょっとだけ、うまくいかないことがあって。」

先生はそう言って、少しだけ困ったように笑った。
でも、その笑顔はいつもの明るさより少しだけ弱かった。

「先生でも、そんな日あるんですね。」

そう言うと、先生は少し目を丸くしてから、ふっと笑った。

「ありますよ。先生だって人間ですから。」

黒板には、昼間の授業の名残で算数の問題がまだ残っている。
誰もいない教室の中で、その文字だけが静かに残っていた。

「でもね。」
先生はそう言って、窓の外を少しだけ見た。

「子どもたちが笑ってくれると、また頑張ろうって思えるんです。」

その言葉を聞いたとき、先生の顔に少しだけ元気が戻った気がした。

「きっと明日は、いい日になりますよ。」

そう言うと、先生は少し照れくさそうに笑った。

「そうですね。そう思うことにします。」

夕方の光が、教室の床をゆっくりと伸びていく。

ほんの短い会話だったけれど、
少しだけ元気のなかった先生の表情が、
帰るころには、いつもの優しい笑顔に近づいていた。

放課後の教室で交わした、小さな会話だった。

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