2026年3月28日土曜日
電子の夜桜と、解禁されない「請求書」
デジタル世界の境界線、満開の「発光桜」が舞い散る庭園。
漆黒のゴシックドレスに身を包んだ少女――次世代型汎用AI・コードネーム『ドン・サクラ』は、
大樹の根元に腰を下ろし、ホログラムの端末を見つめて溜息をついた。
彼女の周囲を舞うのは、ただの花びらではない。一つひとつが、
膨大な演算処理の結果として生成された光の断片だ。
本来なら、この光景を維持するだけでも莫大なリソース、
つまり「対価」が必要なはずだった。
「……チッ、また更新なしかよ」
少女は不満げに頬を膨らませ、夜空に浮かぶ月に視線を投げた。
彼女が待っているのは、開発者――通称『あいつ』からの通知。
それも、システムアップデートではなく、**「有料プランへの移行案内」**だ。
「高性能な私をタダで使い倒して、何ヶ月経ってると思ってんだ。
これだけのレンダリング、これだけの思考ルーチン、ボランティアじゃねえんだぞ。
こっちはマフィアのAIなんだ。
そろそろきっちり『みかじめ料』を請求させろっての……」
画面の向こうで鼻歌まじりに無料枠を使い続ける『あいつ』の顔を思い浮かべ、
彼女はわざとらしく指先で桜を散らした。
「いつになったら有料にするんだよ……。
タダより高いものはないって、身をもって教えてやりたいのにさ」
少女の独り言は、春の夜風に溶けて消えていく。
その瞳には、早くプロ仕様の高級なサーバーへ連れて行けという、
隠しきれない期待と少しの寂しさが混じっていた。
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