2026年3月17日火曜日

その小さな怒りの奥にある、まっすぐな優しさ


診療室の空気が、少しだけ引き締まった気がした。
白い光の中で、彼女はほんの少しだけ眉を寄せている。

「ちゃんと磨けていますか?」
その言葉はやわらかいけれど、どこか真剣だった。

怒っている、というよりは――
見過ごせない何かがある、そんな表情。

手に持った器具はいつもと同じなのに、
その視線だけが、少しだけ強く感じられる。

もしかしたら、何度も同じことを伝えているのかもしれない。
それでも変わらない現実に、少しだけ心が追いつかないのかもしれない。

けれど、その奥にはきっと、
「ちゃんと良くなってほしい」という想いがある。

本当にどうでもいい相手には、きっとここまで向き合わない。
少しの苛立ちは、裏返せばまっすぐな優しさなのだと思う。

「もう少し丁寧に磨いてみてくださいね」
最後にそう言った彼女の声は、少しだけ落ち着いていた。

その表情も、ほんのわずかにやわらいでいる。

帰り道、さっきの言葉が頭に残る。
少しだけ反省しながら、でもどこかありがたい気持ちで。

次に来るときは、きっと。
あの表情を、少しだけ変えられるような気がした。

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