歯医者さんの扉を開けると、少しだけ緊張した空気が流れる。
あの独特の音や匂いに、心が身構えてしまうのは、きっと誰でも同じだと思う。
でも、その日。
目の前に現れたのは、やわらかな笑顔の歯科衛生士さんだった。
「大丈夫ですよ」
そう言われたわけでもないのに、その笑顔だけで、少し肩の力が抜けた。
手には小さなミラーと器具。
けれど、それは怖いものではなく、むしろ安心を運んでくる道具のように見えた。
白く整えられた空間の中で、淡い青の制服がやさしく映える。
その中で、変わらないのは人の温度だった。
「少しチクっとするかもしれませんね」
そんな一言にも、どこか気遣いが込められている。
怖さをゼロにすることはできなくても、
その不安を半分にしてくれる人がいるだけで、こんなにも違うのかと思った。
治療が終わったあと、ふと鏡を見ると、
口の中だけじゃなく、心も少し整えられたような気がした。
帰り際、もう一度あの笑顔を見る。
それは「また来ても大丈夫」と思わせてくれる、不思議な安心のかたちだった。
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