教室の前に立っている先生は、いつもの笑顔ではなく、少しだけ厳しい表情をしていました。
思わず、こちらも背筋が伸びてしまいます。
「先生……ちょっと怒ってます?」
そう聞くと、先生は腕に抱えていたバインダーを少し持ち直して、こちらを見ました。
「うーん、怒っているというより……少し困っているんです。」
「困っているんですか?」
先生は小さくため息をつきながら、教室の中を見渡しました。
後ろでは生徒たちが静かにノートを書いています。
「さっきまで、廊下で走っていた生徒がいてですね。」
「ああ、それはちょっと怒りますよね。」
そう言うと、先生は少しだけ表情をゆるめました。
「危ないですからね。転んだりしたら大変ですし。」
それから先生は、少し真面目な顔で続けました。
「先生は怒りたいわけじゃないんです。ただ、みんなに安全に学校生活を送ってほしいだけなんです。」
その言葉を聞くと、さっきまでの少し怖い表情の理由が、なんとなく分かった気がしました。
「なるほど……先生も大変ですね。」
そう言うと、先生は少しだけ照れたように笑いました。
「まあ、それが先生の仕事ですから。」
さっきまで少しだけ怒っていた先生の表情は、
いつの間にか、ほんの少しだけ優しい顔に戻っていました。
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