夜は、音を失ったように静かだった。
何もないはずの空間に、ただ淡く、光の粒子だけが漂っている。
それはまるで、時間そのものがゆっくりと溶けているかのようで。
その中心に、彼女はいた。
白いドレスは闇に溶けることなく、やわらかな光をまとい、
透き通るような肌は、触れれば消えてしまいそうなほど儚い。
長い髪は静かに広がり、わずかな光を受けて、
夜の中にかすかな輪郭を描いている。
彼女は、ただこちらを見つめている。
感情を強く表すわけでもなく、
けれど決して冷たくはない、穏やかで深い存在感。
その瞳の奥には、小さな星が宿っていた。
瞬くほどでもない、けれど確かにそこにある光。
見ているうちに、こちらの心の奥まで静かに触れてくるような、不思議な輝き。
周囲に漂う光の粒子は、彼女を包み込みながら、
境界を曖昧にしていく。
どこからが空気で、どこからが彼女なのか。
その境目すら、やさしく溶けていく。
ただひとつ確かなのは、
この静寂の中で、彼女が確かに存在しているということだけだった。
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